『善意の第三者』というキーワードは不動産取引や民法で使用されることが多く、簡単に説明すると事情を知らない第三者のことを示します。

不動産取引が違法行為によって消滅した場合、違法行為の内容を知らずに取引してしまった第三者を保護するためにしばしば使用されます。

反対に日常生活で使われる『善意』という言葉は、他人や物事に対しての良い感情のことです。

善意という単語が日常生活と法律の場で、持っている意味が違うということがポイントです。

そこで今回は、不動産取引での

  1. 善意の第三者とは
  2. 実際の具体例
  3. 民法における『第三者』と『善意と悪意』の説明

以上のことを解説します。

不動産取引は難しくてわからないという方でも、覚えておいて損はないと思いますので最後までご覧ください。

善意の第三者とは

善意の第三者とは、特定の事柄を知らない第三者のことを表します。
特定の事柄とは法律に影響する事情のこと、例えば詐欺行為などの違法行為です。
特定の事柄を知っているか否かで、第三者の置かれる立場は大きく変化します。

(例)Bが、詐欺行為によりAを騙しAの土地を手に入れ、さらにその土地をCに転売した場合

この場合特定の事柄というのは、BがAを騙して土地を手に入れたという詐欺行為の情報です。

この情報をCが知らずにBから土地を買った場合は、Cは善意の第三者に該当し、過失(落ち度)がない限り、Cは法的に保護されます。
詐欺行為を知らなかったということと、それについて落ち度がなかったということがポイントです。

逆に、CがBの土地はAから騙し取った土地だと知っている場合は『悪意の第三者』と呼ばれます。

悪意の第三者の場合は、Bの違法行為を知っていながら土地を購入しているためCは法的に保護されません。

これは、Cは詐欺行為を知っていながら土地を購入したという点が悪質だと判断されます。

このように、取引に影響する法的行為を知らなかった第三者のことを善意の第三者と呼び、知っていた場合は悪意の第三者と呼びます。

善意の第三者という言葉は、法律上でよく目にする言葉ですのでこれを機に覚えておいて損はありません。

以下に、表でまとめましたのでご覧ください。

法律に影響する事柄法的に保護
善意の第三者知らないされる
悪意の第三者知っているされない

実際の土地取引における具体例

不動産取引において、善意の第三者が用いられる具体例を紹介します。

  • 詐欺における第三者保護
  • 虚偽表示における第三者保護

詐欺や虚偽表示の事柄を知らずに土地を買った場合、買った第三者が保護され所有権が主張できます。

詐欺における第三者保護

(例)AがBから騙されてBへ土地を売り、さらにBが手に入れた土地を今度はCに転売した場合

民法第96条第1項に『詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる』と記述があります。

これによりAが土地の売買契約を取り消した場合、Bに移っていた所有権がAに戻ります。

土地を買ってしまったCは、本来の所有者ではないBから土地を買ったことになりAに土地を返却しなければいけませんが、このような事案が多々発生すると不動産の取引自体が成り立ちません。

そこで、CがBの詐欺行為を知らない善意の第三者だった場合、土地の所有権をCが主張できることになっています。

これを、詐欺における第三者保護といいます。

虚偽表示における第三者保護

(例)AとBが共謀し架空の虚偽の土地取引を行い、本来はAが所有している土地を書面上はBが所有している土地として偽ってCに売った場合

民法第94条第1項に『相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする』と記されています。

よってAB間の取引は無効で本来の土地所有者である悪質なAに、Cは土地を返却しなければなりません。

このようなことを防ぐため民法第94条2項に『前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない』と記されています。

したがってCがAB間の虚偽表示取引を知らない場合、Cが土地の所有権を主張できます。

これを、虚偽表示における第三者保護といいます。

 

民法における第三者とは

ここでは民法177条を例に第三者について説明します。

まず民法177条には『不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない』と記されています。

この場合、第三者とは

  • 当事者(物権変動によって直接法律上の効果を受ける人)
  • 包括承継人(権利や義務を受け継ぐ人。相続人)以外

で、不動産物権の取得・喪失・変更の登記をされていないことを主張することについて、正当な利益を有する者をいいます。

物権変動とは、物権(所有権)が発生・変更・消滅することです。

要するに当事者とは、所有権の変更などにより法律上の権利や義務が発生する人のことを表します。

また土地の所有権を主張する第三者として、正当な理由の具体例は以下のようなものです。

例えば

  • 土地を譲渡された人
  • 正当な理由で土地を差し押さえた人

などです。

(例)土地がAとBの2人に二重譲渡されてしまった場合

AとBはそれぞれに譲渡されているので、両方正当な第三者に該当します。

また民法177条では登記手続きが完了していない場合、他の第三者に土地の所有権を主張できないということも記されています。

この場合、AかBの早く登記した方が土地の所有権を主張できます。

民法上の善意と悪意

民法上では

  • 善意:特定の事柄を知らない状態
  • 悪意:特定の事柄を知っている状態

を示します。

特定の事柄とは、法律に影響する情報のことを指します。

知っているか否かで立場は変化し、一般的に善意である場合は法的に有利ですが悪意である場合は不利な場合が多いです。

いままでは善意の第三者に該当するのであれば、法的に保護されるということをまとめてきましたが今回は悪意について、民法703条と民法704条を例に解説します。

民法703条『法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う』

民法704条『悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う』

(例)自分の口座に手違いでお金が振り込まれていた場合

民法703条によって、金融機関などに間違いを届け出てお金を返還しないといけません。

しかし間違っていると知りながら黙ってお金を受け取った場合には、民法704条によって受け取った金額に加えて利息もプラスして返還しないといけないことになっています。

このように、知っていながら利益を得た場合は通常より法的に不利な立場になることがわかると思います。

 

まとめ

今回この記事では、不動産取引における善意の第三者についてまとめてきました。

この記事のポイントは

  • 不動産取引における善意の第三者とは、法律に影響する事柄を知らない第三者
  • 詐欺や虚偽表示によって不動産取引が無効になった場合でも、事情を知らず土地を買った第三者は所有権を主張できる。詐欺は無効事由で、虚偽表示は無効事由であるため。
  • 民法における第三者とは、所有権の変更などによって法律上の権利や義務が発生する者
  • 民法における善意とは、法律に影響する特定の事柄を知らないこと。反対に悪意とは事柄を知っていること。
  • 悪意は善意の場合と比べて、法的に不利な立場になる場合が多い

以上です。

不動産売買は扱う金額が大きく、さらに取引時の詐欺行為や書類上の虚偽表示はなかなか見抜けるものではありません。

せっかく買った不動産が、取引無効で元の所有者へ不当に返却しなければいけなくなることを防ぐため善意の第三者は保護されています。

また、土地というものは登記をしなくても法的には問題がありませんが、土地の所有権を主張するためには登記が必要なので加えて覚えておいてください。

善意と悪意、民法では日常生活と言葉の意味が大きく違うので覚えておきましょう。
 

民法 出典:e-Govポータル (https://www.e-gov.go.jp